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Bean to Barの源泉を訪ねて
〜エクアドル編・その3〜

2015.02.17

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「サロン・デュ・ショコラ オフィシャルムック」の取材班による、カカオ豆の有名な産地の一つ、エクアドル・グアヤキルのカカオ農園ルポの3回目。
Bean to Barの核心に迫る旅の魅力をご一緒にお楽しみください。

エクアドルのカカオ農家が
抱える深刻な問題

ナシオナル種の103番を有機農法で丁寧に作っている畑。彼らの苦労が報われない流通上の問題がある。

ナシオナル種の103番を有機農法で丁寧に作っている畑。彼らの苦労が報われない流通上の問題がある。

有機栽培は虫もつきやすく、それらを殺すための殺虫剤も使用しないため、大変である分、食べる側から見れば品質的に安心感があるのも事実。しかし、事はそう単純ではないようです。

「有機農法は現代では効率が悪い栽培方法です。加えて近年、気候変動などによる影響で、花が咲き、実がなる時期がずれたり、雨期がずれたりしています。そのため、それらの条件でも育ちやすい“CCN種”という改良品種が作られました」

このCCN種は農家にとっては安定した収穫が可能になる便利なカカオなのだそう。しかし、エクアドルには独自の“ナシオナル種”という、クリオロ種でもフォレステロ種でもトリニタリオ種でもないカカオ豆があるのです。「アリバ」という商品名で売り出されるこのエクアドルのカカオ豆が、この改良品種に置き換えられつつあるのだそう。

赤い実をつけるCCN種(赤色はすべてCCNという訳ではない)。生命力を感じられない畑だった。

赤い実をつけるCCN種(赤色はすべてCCNという訳ではない)。生命力を感じられない畑だった。

「CCN種を手掛ける農家を批判する気はありません。彼らにも家族があり、生活を維持しなくてはいけませんから。加えてカカオの栽培はますます難しくなっていますし……。でも……」

と言って案内してくれたのは、先ほど見た葉っぱなどがそのまま肥料にされている有機栽培の畑とは違い、枯葉が土壌の表面に散らばり、1本1本のカカオの木と枝がハッキリと区別できるほど“スカスカの”カカオ農園でした。

「この畑では、虫がつかないよう殺虫剤を使っています。だから下にも落ち葉などの植物がありません。しかし、太陽の日差しが直接土に当たり、カカオの木も痩せてきています。確かに収穫は確実にできるのですが、味や風味はナシオナル種とはまったく別のものになっています。長い時間をかけて健康被害がないとも言い切れません。とにかくエクアドル本来のカカオ農法ではないのです」

“土地が枯れた畑”と彼らが呼んでいた農園で採れたカカオは、人体に本当に影響がないのだろうか? 少し考え込んでいると、さらに驚く話を始めたのです。

「それ以上に問題なのは、中間業者である仲卸しの会社が、知識やノウハウに乏しく、このCCN種と有機農法で育てたナシオナル種を混ぜて売ってしまうことです。それが“エクアドルのカカオ”として出荷されてしまうのです」

こうなってしまうと、私たち消費者がそれを判別する方法はありません。国や行政が乗り出さなければならないような問題に思えますが、それを頼りにしていては、時間ばかりがかかってしまうのも事実。ついに農家の人々は、みずから対策に乗り出しました。

志の高い農家が結託して
「エクアドルのカカオの味」を守る

実際に現地まで来て、栽培や収穫の指導をするドモーリのような会社は珍しいという。こうした農家とのキャッチボールがクオリティの高いショコラ作りの“原点”だと思い知る。

実際に現地まで来て、栽培や収穫の指導をするドモーリのような会社は珍しいという。こうした農家とのキャッチボールがクオリティの高いショコラ作りの“原点”だと思い知る。

「我々は同じ考えを持った農家同士が共同で組合のような組織を作りました。その組合を通してカカオ豆を販売します。大変ですが、エクアドルの本来のカカオの味を守るためです。幸い、ドモーリ社のような、現地まで来て、状況をチェックし、良い豆なら独自で仕入れてくれる会社も現れています」

「ドモーリ」のジャンルーカ氏に尋ねると、まだまだドモーリのショコラとして販売できるほどのクオリティではないので、この組合のカカオが商品化されるのは少し先になるかもしれないとのこと。それでも、そう遠くない日に彼らの作る“エクアドルのカカオ”から作るチョコレートが日本でも食べられる日が来ると信じています。

(その4【最終回】へ続きます)

※掲載の記事やブランドは実際の出展とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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