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Bean to Barの源泉を訪ねて
〜エクアドル編・その4〜

2015.02.27

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サロン・デュ・ショコラ オフィシャルムック」の取材班による、カカオ豆の有名な産地の一つ、エクアドル・グアヤキルのカカオ農園ルポの最終回。
Bean to Barの核心に迫る旅の魅力をご一緒にお楽しみください。

ジャンルーカ氏が語る、
Bean to Barの本質とは?

「ドモーリ」のジャンルーカ・フランゾーニ氏は現在のBean to Barの風潮に疑問を呈します。
「カカオの味を決めるのは50%が“遺伝子”です。25%が発酵とか乾燥の仕方など“収穫後の作業”によるものです。そして、20%が工場で行う焙煎などの作業の影響。残りの5%くらいがテロワールによるものです。ワインなどは同じ丘で栽培しても、北と南では太陽を浴びる時間も異なり、味も違う。つまりテロワールの影響がとても大きいのです。カカオでも同じことが言えるのでは……と思い、ベネズエラの農園に、いろんな国のカカオを試しに植えてみたのですが、結果は本来の種による味の違いだけが出ました。テロワールによる味の影響は出なかったのです」

テロワールとは、土地や風土、気候など、その地域が本来持つ天然の特徴のことです。もちろんエクアドルのカカオを東京に持ってきても、カカオが育つ最低限の気候条件を満たさないので育てるのは難しいそうですが、それらの最低条件を備わっていれば、カカオの味に地域性は関係ないそうです。つまり“それが何の種であるか”が重要だということです。
「現在のBean to Barはほとんど20%にあたる、焙煎やコンチングなどの作業のことをさしていています。オリジナルのチョコレート作りをめざすなら、味に75%もの影響が出る農園に目を向けないとダメだと思うのです」

ハイクオリティなカカオ作りを続ける
エクアドルのビクトーリア農園へ

エクアドル第2の都市・グアキヤルから車で2時間弱のところに、東京ドーム100個分以上の巨大な敷地でカカオを栽培するビクトーリア農場があります。若き社長のアンドレ・グズマン・バケリーゾ氏に農園を案内して頂きました。バケリーゾ氏はエクアドルに200以上の店舗展開をする、家電量販店の社長でもあるそうです。

キャプ:丘に張り巡らされたソーラーパネル。ここで農園のすべての電気を生み出しているそうです。

丘に張り巡らされたソーラーパネル。ここで農園のすべての電気を生み出しているそうです。

国の後押しもあり、近くの川から農園に引水し、従業員とその家族もそこに住まわせています。小高い丘には無数のソーラーパネルが張り巡らされ、聞けばそこでの発電で、農園で使用する電気すべてをまかなっているのだそうです。ネスレ社(スイス)で35年以上勤務したベテランを招聘し、5年前より独自のカカオ作りに挑んでいます。

苗木を育てているビニールハウスで、ジャンルーカ氏(左)とバケリーゾ氏が話し合う。

苗木を育てているビニールハウスで、ジャンルーカ氏(左)とバケリーゾ氏が話し合う。

見て驚いたのは徹底した品質管理。苗木からていねいに育て、カカオの木の理想的な育ち方などを研究し、収穫後の作業も「半乾燥」「半発酵」という独自の方法を試みています。ジャンルーカ氏も「ここまでちゃんとやっているところは南米全体でも少ないです。彼らはクオリティの高いカカオがどういうものかをよく理解していますし、それを求めるために何を研究して、何をすればいいのかというのが分かっていると思います」と言います。

管理の行き届いた発酵&乾燥システムに、質問が尽きませんでした。

管理の行き届いた発酵&乾燥システムに、質問が尽きませんでした。

バケリーゾ氏は微笑みながらこう話してくれました。
「最初はCCN種(改良品種)を90%、残り10%をエクアドル本来の品種、ナシオナル種にしようと考えていました。もちろんそのほうがビジネスとしても利幅が大きいですからね。でもある時、急にそうしたくなくなったのです。エクアドル古来のアリバ(ナシオナル種の一つ)を作りたくなり、95%をナシオナル種、5%をCCN種にしました。仕事仲間からは『気でも狂ったのか』と言われましたよ(笑)」
広大な農地で、斬新な試みとハイクオリティなカカオ作りが進められています。エクアドルのカカオに一筋の光が差した気がしました。

今でも世界15か国の農場に足を運ぶジャンルーカ氏を感嘆させたナシオナル種(95番と103番)は、その後イタリアに運ばれ、「ビクトリア」と農場の名を付けられ、サロン・デュ・ショコラ日本で発売されました。これはジャンルーカ氏が、世界で最初に日本のお客さんに食べてほしいと思ったからだそうです。

ジャンルーカ氏と考える、
カカオの未来、チョコレートの未来

クオリティの高いカカオを作るには相当な手間暇がかかります。消費者がおいしいチョコレートの対価を支払うことで、生産者を支える仕組みが生まれるはずです。

クオリティの高いカカオを作るには相当な手間暇がかかります。消費者がおいしいチョコレートの対価を支払うことで、生産者を支える仕組みが生まれるはずです。

エクアドルで多くの農園と農園主に会い、つくづく感じたのはチョコレートは工業製品ではなく“農産物(農業製品)である”ということです。カカオ、砂糖、アーモンド……何一つとっても農園以外から生み出されているものはないことに気がつきました。
最後に、そうした農業従事者、生産者、味のクオリティなど、チョコレートを取り巻く環境を改善するには何が大切なのか、とジャンルーカ氏に尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「最終的には、カカオに対する“成熟した文化”が生まれない限り、世界観も変わらないと思います。例えばカカオはコーヒー以上に手間がかかるということが理解され、もっとカカオ豆やチョコレートを高く買ってもらえるようになれば、カカオ生産者のクオリティも上がり、めぐりめぐってさらにおいしいチョコレート作りにつながると思います。そうしたことをお客さまに理解していただくことが、とても重要だと思います」

<終>

※掲載の記事やブランドは実際の出展とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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