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CACAO特集 VOL.4

2021.01.3

カカオ豆(bean)から板チョコ(bar)までの全工程を一貫して行う「ビーントゥーバー」の世界。今回は、カカオ豆からボンボンショコラまでを手掛ける「ビーントゥーボンボン」をはじめ、“ビーントゥーバーだからできること”を掘り下げてカカオの新たな魅力を伝える、日本の3大シェフのブランドをご紹介します。

<カカオストア>

日本のショコラをリードしてきた先駆者が挑む
惚れ込んだカカオを魅せるためのビーントゥーバー

“ショコラ”という言葉が定着する20年以上も前に、「ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ」を立ち上げた土屋公二氏。ショコラティエの仕事とは、原材料のクーベルチュールチョコレートを選び、あるいはブレンドしてオリジナルの味わいをつくり、ショコラに仕立てていくことだと捉えていたといいます。
「チョコレートはあくまでも素材だから、買うのが当たり前だと思っていました。カカオ豆から自分でチョコレートを作るなんていう発想はなかったですね」

ところがテオブロマをオープンして間もなく、図らずもベネズエラのチュアオ村のカカオ農園を訪れることになります。チュアオといえば、今でこそ類まれなるカカオの代名詞。「当時は、プロでもカカオについて話題にする時代じゃないし、僕自身もカカオのなんたるかが、行くまではよくわかっていなかった」

チュアオではじめてカカオという植物の生態に触れ、発酵・乾燥の工程を目の当たりにし、“いつかカカオ豆からチョコレートを”という夢が芽生えたといいます。

その密かな夢が大きく羽ばたいたのは2013年。ペルー北西部のピウラ地方を訪れたとき、地元のカカオで作られたチョコレートに感銘を受けたのがきっかけでした。
「びっくりするほど香りが強くて、心地よい酸味。こんなにおいしいものがあるんだって、一粒だけで満足感がみなぎったんです」

多くの人にこの体験を伝えたい、このカカオを使って自分でチョコレートを作りたいという思いが、土屋氏をカカオ豆からのチョコレート作りへと駆り立てたのです。また、ビーントゥーバーに特化したセカンドブランド、「カカオストア」をオープン。東京の富ヶ谷にある同名の店舗では、自らカカオ豆から手掛けたタブレットを中心に、世界中のビーントゥーバーチョコレートを扱っています。

ビーントゥーバーだからこそ、産地の個性を強く打ち出したい
年に4回も、中南米を中心にカカオ産地に足を運ぶという土屋氏。自分の扱うカカオがどのように栽培・手入れされ、発酵・乾燥がなされているかを実際に知る重要性は、友人である「ボナ」のステファン・ボナ氏から学んだといいます。持ち前の愛されキャラで生産者たちと絆を築き、ときには彼らの自宅に招かれることも。現地では観光もし、郷土料理を食べ、カカオが育まれる土地の文化を丸ごと楽しんで理解するのが土屋流。

カカオの良し悪しを見極める目も養われ、今では発酵の状態を確認するカットテストの段階で、カカオを割ったとたんに、その音でピンとくるようになったといいます。“美人な豆”たちから、「早く私をチョコレートにして!」という声が聞こえることもあるのだとか。

そんな土屋氏のセレクトするカカオは風味の個性が強いものばかり。その個性をストレートに味わってほしいからこそ、ビーントゥーバーで作るチョコレートは、シングルオリジンのタブレットがメイン。カカオバターの追油も極力控え、加えるにしてもカカオの香りが強い未脱臭のカカオバターを使用。これは、一般的な無味・無臭のカカオバターではカカオの風味が薄まるだけという考えゆえ。
ビーントゥーバーで作ったチョコレートからボンボンショコラを作る場合でも、シングルオリジンで仕立てることが多いのは、「せっかく出会った豆を“すっぴん”で出したいから」。

焙煎加減やカカオ分のパーセンテージを調整し、自分だけの味わいを表現できるのがビーントゥーバーの醍醐味だと語る土屋氏。旅に出るごとに扱う産地は増え、ビーントゥーバーのタブレットの世界は広がっています。マダガスカルでは数年前から、貧しいカカオ農家を支援する取り組みをスタート。現地でカカオの発酵・乾燥を指導し、高品質に仕上がったカカオを適正価格で買い取ることで、カカオの品質と、農家の生活レベルの向上を目指しています。このマダガスカルのカカオは100%ビター、65%ビター、46%ミルクの味わい&パーセンテージ違いのタブレットで楽しめます。今回のサロン・デュ・ショコラには、この46%ミルクでドライいちじくをコーティングした「カボス オ フィグ」も登場。

過去20年で発酵技術が上がり、カカオの質もぐんとよくなり、これからがますます楽しみだという土屋氏。カカオストアのチョコレートで、未知のカカオとのすてきな出会いがありますように!

カボス オ フィグ 3,240円(陶器ポット付)

<ショコラティエ パレ ド オール ブラン>

カカオとチョコレートに身を捧げたショコラティエが
ビーントゥーバーで拓くホワイトチョコレート新時代

獺祭や世界五大ウイスキー、お茶をはじめ、多彩な素材とチョコレートのマリアージュを育んできた「パレ ド オール」の三枝俊介氏。
「使えば使うほど、チョコレートって特性が分かってくるんです」
この言葉どおり、ショコラティエとして年間10トン以上のチョコレートを扱うなかで、チョコレートに対する理解が加速度的に進んだといいます。

市販のクーベルチュールチョコレートをブレンドして自らの求める味わいを生み出し、傑出したショコラに仕上げていく……。けれど追求すればするほど、市販のものを使うことに限界を感じるようになったといいます。
「作りたいものが表現できないという感覚が、どんどん強くなっていったんです」

自分の思い描く味わいのボンボンショコラを実現したい。この一心から三枝氏が選んだのは、オリジナルのチョコレートを作るという道でした。こうして2014年、残りの人生をチョコレートに賭けるべく、清里に本格的な工房を設けてカカオ豆からのチョコレート作りをスタート。
現在ではショコラからケーキまで、自家製チョコレートで手掛けています。

三枝氏のビーントゥーバーのベースにあるのは、ボンボンショコラを見据えた味づくり。
カカオという素材からいかにおいしいチョコレートを作るかという、ショコラティエならではのアプローチです。現在は約15産地のカカオを扱い、1つの産地の豆からビターチョコレート、ビターミルク、ミルクチョコレートの味違い、あるいはパーセンテージ違いで仕上げます。この数多い自家製チョコレートの味わいのパレットは、「いわば単色の絵の具をたくさん持っているようなもの。だから自由に色作りができるんです」。

カカオの風味が主役のホワイトチョコレート

カカオからのチョコレート作りに打ち込むほど、カカオについての謎は深まるばかりだと語る三枝氏。探求心に火がついて、ついにはホワイトチョコレートもカカオ豆からの一貫製造に乗り出したのです。2019年、東京の青山に、ホワイトに特化したブランド「パレ ド オール ブラン」をオープン。これは前人未踏のチャレンジでした。

ホワイトチョコレートというのは、カカオバターに粉乳と砂糖を混ぜて作られます。カカオ豆の中には油脂分が50%~60%ほど含まれており、これがカカオバターと呼ばれるもの。多くのチョコレートには、流動性をもたらすためにカカオバターが追油されますが、設備・時間・コストがかかることから、市販品を使うのが一般的です。ビーントゥーバーの大手ブランドでも自社でカカオバターを搾っているところは珍しく、ましてや、自家製のカカオバターからホワイトチョコレートを作るなど世界でもほとんど例をみません。

パレ ド オール ブランのホワイトチョコレート作りは、焙煎したカカオをすり潰しながら液状のペーストにするのに3~4日。ここまでは通常のチョコレート作りの工程と同じです。このペーストをプレス機で圧搾してカカオバターを搾るのに最短でも3日。そして、カカオバターに粉乳と砂糖を加えて練り上げるのにさらに3~4日。つまり、カカオ豆の焙煎からホワイトチョコレートが完成するまでに約10日もかかるというわけです。

市販のカカオバターは脱臭処理した無味無臭のものが主流ですが、自家製だからこそカカオ本来の香りが生き、ホワイトチョコレートの可能性が広がるのです。

さらに三枝氏は、カカオバターにもカカオの産地ごとの風味や個性を見出し、ホワイトチョコレートの世界にシングルオリジンという概念を持ち込みました。
「タブレット ブラン」はトリニダード、ベトナム、タンザニアなど5つの産地違い。カカオの個性とミルクの風味が織りなす、表情豊かなホワイトチョコレートのタブレットです。また、カカオバターは産地によって融点や固さが異なるため、くちどけやテクスチャーの違いも楽しめます。

今までなおざりにされていた“カカオのピュアな雫”に光をあて、ホワイトチョコレートもビターチョコレートのように大人の嗜好品へ! 産地別のホワイトチョコレートをブレンドし、素材とあわせてショコラに仕上げたり、砂糖の代わりにメープルシロップを使ったり、ビーントゥーバーだからこそホワイトチョコレートも変幻自在。パレ ド オール ブランで、ホワイトチョコレートの新たな扉を開いてみませんか?

タブレット テロワール ブラン 1,296円

<ヨロイヅカEC>

エクアドルの自社農園カカオを深く掘り下げ
みずからのチョコレート道を生きるパティシエ

「催事などで、フランスやベルギーの偉大なショコラティエたちと肩を並べることに、どこか引け目を感じていたんです……」
こう語るのは、「トシ・ヨロイヅカ」の鎧塚俊彦氏。パティシエとしてショコラを手掛けるなかで、自分はそうしたショコラ一筋のカリスマたちに太刀打ちできるのか、どうしたら自分のチョコレートがおいしいと胸を張って言えるのかと、自問自答していたのだとか。そして辿り着いた答えは、「もうカカオ畑からやるしかない!」。

2010年にエクアドルで開設したカカオの自社農園は、エクアドル第二の都市グアヤキルから車で1時間ほど。もともとはジャングルだった土地をパワーショベルで切り開くことからはじまったといいます。井戸を掘ってスプリンクラーも導入し、整地したこの3ヘクタールの農地に、国立カカオ研究所で自ら選定したエクアドル固有のナショナル種の苗木3,333本を植樹。ビーントゥーバーを飛び越え、さらに源流のファームトゥーバーの世界へ飛び込むことになったのです。

初の収穫を迎えたのは3年後。このカカオで作った記念すべき第一号は、ロースト時間5分&カカオ分80%で仕上げた、かなり“尖った”チョコレートのタブレットでした。このチョコレートの原型は、鎧塚氏がはじめてエクアドルを訪れたときに食べた、原始的なチョコレート。軽くローストしたカカオをミキサーにかけただけのその塊は、荒々しく野性味にあふれ、「口の中で爆発するような味わい」だったといいます。それこそが、エクアドルのカカオ本来の味。よりなめらかにするなど進化させつつも、5分&80%のチョコレートは鎧塚氏にとって、エクアドルでカカオを畑から手掛けていることのまさに象徴です。

天候や疫病による不作に見舞われたこともあり、自社農園を持つとおのずと制約が生じますが、「縛りがあるからこそ、深くやると面白いというのを僕はやっていきたいんです」と語る鎧塚氏。それは、さまざまな産地の個性を謳ったり、産地別のカカオをブレンドしてオリジナルの味わいを生み出すのとは、真逆のアプローチ。ロースト時間やカカオ分を変えてみたり、砂糖の代わりに羅漢果を使うなど、自らのカカオ豆にじっくりと向き合い、多角的に取り組んでいるのです。

鎧塚氏のこの考えがよくわかるのが、ロースト時間の違い(5分、20分、40分)をコンセプトにしたタブレット「トロワ・キュイッソン」。同じ豆でもローストの違いで、劇的に味わいが変化するのです。一般的にカカオのロースト時間は40分以上。ロースト時間が長くいほど焙煎香が強くなり、いわゆるチョコレートの味わいに近づいていきます。一方、極端にロースト時間が短い5分は、酸味が強く、フローラルな香りやフルーティーさも鮮烈。雑味も個性と捉え、あえて発酵の香りも残るように仕立てるのは、エクアドルのカカオ本来の荒々しさや力強さを伝えたいからにほかなりません。

エクアドルの畑の豆から“ファームトゥーボンボン”

2018年、創業の地である恵比寿の店舗を、ショコラ専門のブランド「Yoroizuka EC」としてリニューアルオープン。エクアドルの農園から届いたカカオは、小田原の「一夜城ヨロイヅカファーム」でチョコレートに加工した後、Yoroizuka ECでタブレットやボンボンに仕立てられます。

今回のサロン・デュ・ショコラで登場する「Collection 2021」も、自社農園のカカオをベースにしたボンボンショコラのアソート。ロースト時間の違い、カカオ分の違いで作ったチョコレートを、あわせる素材や表現したい方向性に応じてブレンドし、ガナッシュに仕立てています。たとえば「羅臼昆布×唐辛子」は、短めのローストでエクアドルの力強い味わいを生かしつつ、少し長めにローストしたものをブレンドしてバランスをとっています。ほかには、個性的な風味の南国のフルーツを使った「クプアス・ライチ」、親しみやすい味わいの「オレンジ×ジンジャー」と「ココナッツプラリネ×キャラメル」の4種。

ちょっと尖がったショコラから、誰もが素直においしいと思う味わいまで、Yoroizuka ECのチョコレートで、エクアドルのカカオを深掘りしてみませんか?

Collection 2021 1,901円

※画像は商談時のものです、実際の出展とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

※価格は全て税込みです。

2021