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CACAO特集 VOL.5

2021.01.12

カカオ豆(bean)から板チョコ(bar)までの全工程を一貫して行う「ビーントゥーバー」の世界。今回は、カカオの選定に深く関わり、ボンボンショコラまでの「ビーントゥーボンボン」を手掛ける、フランス、ベルギー、スペインの海外3ブランドをご紹介します。

<ミシェル クルイゼル>

妥協を許さぬ素材選びと味の追求で
チョコレートの真価を示すフランスの名門

1948年、ノルマンディー地方の田舎町ダンヴィル。祖父が自宅ではじめたショコラの製造&卸しは評判を呼び、父の代で大きく発展。「ミシェル クルイゼル」の名はフランス中に知れ渡りました。そして子は市場を国外へも広げ、今や世界52か国にショコラを輸出するまでに。時代に連れてイノベーションをもたらしながらも、変わらぬ理念は、“本物の味わいは、最上の素材から生まれる――”。

「厳選した素材を使い、うちの商品がなぜ本物かを示したいんです。それは品質の高さであり、つまりは、おいしくて健康にいい。そして、永く愛されるものです」こう語るのは、3代目のマーク・クルイゼル氏。農産加工学を学ぶうちに、現代のフードシステムでは消費者の健康は二の次で、香料の添加が常態化していることに疑問を感じたといいます。それゆえ、こうした風潮とは逆を目指そうと、家業に身を投じたのです。

理想を追い求め、1990年代からは、シングルプランテーションのカカオ豆を使ったチョコレート作りに乗り出しました。クルイゼル氏にとって、カカオ農園はいわばワインにおけるシャトー(ワイン畑)。だからこそ、テロワールならではのカカオの個性を尊重すべく、厳選した単一農園との直接取引にこだわっているのです。

ミシェル クルイゼルが「カカオフェヴィエ®(カカオ職人)」と名乗るのは、より踏み込んだかたちでカカオに取り組んでいるという自負のあらわれ。

「最終的なチョコレートの味わいを決めるのは、土壌が25%。発酵が70%、そして焙煎が5%」とクルイゼル氏。発酵こそアロマ醸成の最重要な工程という考えから、農園を選定する際には、温度と日数違いで5パターンの発酵を試してもらうのだそう。そしてそれぞれ5パターンで焙煎。つまり25通りの発酵・焙煎の組みあわせを試し、アロマが最適に表現されたチョコレートを生み出していくといいます。

生産者のカカオへの向き合い方も重要なポイントで、パートナーはみな、代々受け継がれた土地でカカオを守り育ててきた人たち。厳しい要求に応えてくれる彼らの努力に報いるべく、カカオ豆は相場の5~7倍の値段で買い取っています。生産者と発酵・乾燥について話しあうなど、対等な関係を築いているからこそ、品質の高いカカオの安定供給につながっているのです。タブレットに農園の名をつけるのは、最大級のリスペクトに他なりません。

焙煎にも独自のこだわりが見られます。一般的にはカカオ豆を170~180℃で焙煎するのに対し、ミシェル クルイゼルは100~110度と低温焙煎。時間をかけてゆっくり焙煎することで、ポリフェノールを保ちつつ、中心まで均一な火入れを実現できるのです。これはひとえに、カカオの美徳を最大限に生かした、体にいいチョコレートに仕上げるため。

カカオからのチョコレートを匠のショコラへ

ミシェル クルイゼルのチョコレートは、レシチンや香料、保存料、着色料を添加せず、天然のブルボン種バニラビーンズでカカオのアロマを深めているのが特徴。マンゴーや柑橘の風味が華やかなマダガスカルのマンガロ農園や、トロピカルフルーツやナッツの風味、ローストしたカカオ感が際立つメキシコのモカヤ農園など、7産地の契約農園と共にさらなる進化を目指しています。「シングルプランテーション カレNo.28」は、そのすべての産地の食べ比べをミニタブレットで。

ショコラティエ、コンフィズール(砂糖菓子職人)として70年以上の歴史を誇るミシェル クルイゼルは、ボンボンショコラやチョコレート菓子もカカオから一貫製造。プラリネやジャンドゥーヤなどの副素材ももちろん自家製です。伝承の技術とノウハウを体現したのが、先代からレシピを受け継いだ「シャンピニオン・キャラメル」。1つ1つていねいに手作りされるキノコ形ショコラは、わずかに表情違いの愛らしさ。軸の部分はキャラメル×ホワイトチョコレート、笠はアーモンドのヌガティーヌ×ビターチョコレート。小さなショコラに熟練職人の技がぎゅっと詰まり、味わいと食感のバランスがお見事! 今回のサロン・デュ・ショコラには、フィリングがジャンドゥーヤのバージョンも登場します。

究極の味わいを追求するミシェル クルイゼルのチョコレート。記憶に残るそのおいしさは、きっと誰かに伝えたくなるはずです!

シャンピニオン・ジャンドゥーヤ 2,376円

<ブノワ・ニアン>

クラフトマンシップでカカオと向きあい
アロマ豊かなチョコレートを贈るベルギーブランド

「ショコラトリーってどこも、カカオ豆からチョコレートを作っていると思っていたんです」と笑うブノワ・ニアン氏。それもそのはず、製鉄メーカーのエンジニアからショコラティエに転身という異色の経歴! チョコレートの世界に飛び込んだのは30歳のときでした。ブリュッセルの名門ショコラトリーで経験を積むかたわら、2005年に「ブノワ・ニアン」を立ち上げ、いきなりカカオからのチョコレート作りをスタートしたのです。

「職人として、正真正銘のチョコレートを作りたいという思いがあったんです。だから、カカオ豆からチョコレートを作るのは必然でした」

当時はまだ個人が扱えるビーントゥーバーの機械もなく、情報も乏しい時代。実家のガレージを工房代わりに、オーブンでカカオを焼き、スパイス用の小型機械を自分で改造してカカオを挽くなど、試行錯誤の日々だったといいます。

やがてミシュランの星つきレストランや食のセレクトショップへチョコレートを卸すようになり、今ではリエージュ近郊のアワンを拠点に、ベルギーに5店舗を構えるまでに。

ブノワ・ニアンのビーントゥーバーとの向き合い方は、ワインの銘柄になぞらえた「ショコラ・ド・ドメーヌ」という言葉に端的にあらわれています。タブレットのパッケージに記されたこの言葉は、単一農園で育まれたカカオのチョコレートであることの証し。

世界のカカオの多くは、農園や品種の区別なくブレンドされ、チョコレートに加工されているといいます。この流れに逆らうべく、ニアン氏はテロワールと結びついた固有種のカカオを求めて世界の産地を旅し、生産者から直接仕入れています。「産地ごとのカカオ本来のアロマのニュアンスを生かしたい」からこそ、カカオはブレンドせず、農園ごとのシングルオリジンにこだわり、その土地ならではの品種の個性を尊重しているのです。

新たなカカオと出会うたびに、カカオについての知識を深めながら、進化していくのが願い。2つの産地からスタートし、今では、ホンジュラスのビビッドな赤いカカオポッドが特徴の「マヤン レッド」や、ブラジルのホワイトカカオ“カルタンゴ種”を使った「ラジェド ド オウロ」など、個性的なカカオのラインナップは12の産地に広がっています。

100年前と変わらぬチョコレート作りの風景

ニアン氏のこだわりは、使用する機械からも垣間見えます。それは旧式の“心ある機械”たち。焙煎機は1950年代に製造が終了した年代物、メランジャーやコンチングマシンは19世紀のものをオーバーホール。コンピューター制御の最新型と違い、「昔の機械は機能が単純だからこそ、素材の反応がダイレクトに分かるので、より自分の求めている味わいに調整できるんです」と、あくまでも職人気質。

65~78時間という長時間のコンチングも特徴の一つ。これにより、まろやかな味わいと、なめらかなくちどけを実現できるのです。試作の際には、30~40時間たったら1時間おきに味見をし、カカオごとに適切なコンチング時間を決めていきます。

カカオ豆から扱うショコラティエとして、ボンボンショコラまで手掛けるのは使命だと語るニアン氏。ショコラの場合もカカオの個性が主役だからこそ、カカオは農園ごとのシングルオリジンで使い、あわせる素材で風味を高めたり、ハーモニーを生み出したり。とはいえ、カカオ豆からボンボンショコラまでを作るには、タブレットにするよりも扱いやすいチョコレートに仕上げる必要があり、技術的に難しいのだそう。

その食べ比べを楽しめる「ドメーヌC」は、5つの産地のカカオをそれぞれ、ミニタブレットとガナッシュに仕立てたセット。同じカカオを使っていても、カリっとしたタブレットと、生クリームやバターが入ったガナッシュでは食感が異なるため、アロマの立ち方や広がり方は違ってきます。また、ガナッシュには砂糖がさらに加わることで引き出されるアロマもあるので、アロマの感じ方のバランスも少し変わるはずです。

テロワールを体現したブノワ ニアンのチョコレート。その芳醇なアロマに誘われ、カカオを巡るテイスティングの旅をお楽しみください!

ドメーヌC(5個+5枚入) 3,780円

<カカオ サンパカ>

チョコレート文化発祥のスペインから
カカオの神髄と歴史を伝える王室御用達ブランド

“神々の飲み物”と呼ばれ珍重されていたカカオが、ヨーロッパに初めてもたらされたのは16世紀のスペイン。原産地の中南米では、すり潰して唐辛子やバニラ、とうもろこしなどを加えて飲まれていたカカオは、はちみつや砂糖で甘みをつけたチョコレートドリンクになり、スペインの王侯貴族にもてはやされました。そしてスペインは、他のヨーロッパ諸国に先駆け、中南米でカカオのプランテーション栽培に乗り出したのです。

そんなチョコレートとの縁が深いスペインのバルセロナで、1999年に誕生した「カカオ サンパカ」。分子ガストロノミーで料理界に革命を起こした「エル・ブリ」のシェフ、フェラン・アドリアの提案からスタートしたこのブランドは、スペイン最大のカカオ豆の輸入・チョコレート原材料の製造会社「ネダーランド」の子会社であることが強み。

「ネダーランドが90年近い歴史の中で培ったノウハウと技術によって、カカオという不安定な品質の農作物から安定した品質のチョコレートを生み出せるので、カカオ サンパカも高い品質を保てるのです」と語るのは、ネダーランド社の3代目にして、カカオ サンパカのCEO、アルベルト・リウス氏。

シングルオリジンという概念がまだ定着していない1992年にいち早く、ネダーランドのグループ会社が産地別チョコレートを発表したという背景もあり、カカオ サンパカが扱うカカオの産地はアフリカから中南米まで、赤道をめぐる“カカオベルト”をぐるりと一周するように20か国、産地数では50以上。また、カメルーンやコンゴなど、良質なカカオ生産が難しいエリアも開拓し、珍しい産地のカカオも充実しています。

その産地別カカオから生まれるタブレットは、厚さ5ミリのスリムなフォルム。この薄さゆえ、口のなかでゆっくり溶けながら、カカオごとの個性が繊細に広がるのです。

一方、産地別のボンボンショコラはシングルオリジンのガナッシュに、同一産地のチョコレートで厚めのコーティング。この厚みがカカオ サンパカのショコラがクリーミーである理由。コーティングといってもシェルを型抜きし、そこにガナッシュを閉じ込めるからこそ、とろりとなめらかなテクスチャーが実現可能なのです。
今回のサロン・デュ・ショコラでは、産地別カカオのポテンシャルをさらに突き詰めた、カカオ分100%ガナッシュの「100% 原産地別ボンボン(砂糖不使用)」も登場します。

生産地支援から生まれる、持続可能なカカオ文化

「生産地での発酵・乾燥はチョコレートの味わいを大きく左右し、後から調整が利きません。ですから生産地を支援し指導していくことが重要なんです」とリウス氏。カカオ サンパカのカカオ産地へのこだわりは、チョコレート生産の持続可能性を見据えてのこと。

たとえば、降雨量の多いコンゴでは、薪火乾燥が一般的なためスモーキーな風味のカカオが主流でしたが、温水乾燥設備を導入することで、他に類をみないコンゴ産のクリオロ種カカオの生産にたどり着いたといいます。

また、メキシコのチアパス州では、19世紀初頭までスペイン王室に献上されていたクリオロ種「ショコヌスコ®」の再生を成し遂げました。絶滅したといわれていたこのカカオの原種を探し出し、苗木を増やすことからスタート。同時に生産者団体を支援し、カカオの栽培方法から発酵・乾燥の設備やノウハウにいたるまで、最良のカカオを生産できる体制を構築。初年度2007年に20トンだった生産量は、現在ではその20倍以上を誇り、現地の人々の生活基盤となっているのです。

「レジェンダ」は、そうした希少なカカオ3種のボンボンショコラ。「ショコヌスコ®」はレーズンを思わせる果実味と深いカカオ感、カカオ分70%ながらミルクチョコレートのような色あいの「ラ・ホヤ」は豊かな酸味が際立ち、赤いカカオポッドが特徴のマヤンレッドを使った「リオ セコ」は、パワフルな味わいを感じさせます。

 カカオ サンパカのチョコレートが口のなかで溶けるたびに、カカオがロマンを紡ぎ出し、壮大なチョコレートの歴史がひも解かれていくはずです!

レジェンダ 1,944円

※画像は商談時のものです、実際の出展とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

※価格は全て税込みです。

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